第13回 実は素晴らしい!?日本の就活 ~その⑩~

・前回学んだこと →若者の価値観と日本的雇用システム、メンバーシップ型雇用は相性が良い。「①終身雇用という安心がほしい」ので若いうち給与が安くても「③年功賃金でいいです」もし問題がなければ「②長く一社で働きたい」が20代の本音。

・今回学ぶこと →とは言え、相性が悪い部分もあるのでは? それはどこ?

 

「やはり金融は安定していると思うんですよ」

「都銀や地銀、信金など金融を受けてみようかなと思っている人は挙手してください」

ある地方の大学で講演をしていた時に私は学生に質問しました。約7〜8割の学生が手を挙げました。あまりの多さに驚きました。講演が終わった後、何人かに直接聞いてみると彼らはこう答えました。

 

「やはり金融は安定していると思うんですよ」

「地元の銀行なら実家から通えるし」

 

 日銀のゼロ〜マイナス金利政策で多くの地域金融機関は経営的に苦しんでいるのですが、にもかかわらず7〜8割の学生が金融志望なのです。地域貢献などもありますが、金融志望の最大の理由は安定志向のようです。

  今回はそんな若者の意識が、日本的雇用システムと、どう相性が悪いのかを、下記の調査から見ていきたいと思います(今回は大学生のみを対象)。

 

「働きたい組織の特徴・2018年卒」調査(リクルート就職みらい研究所)

有効回答7285人(大学生、大学院生) 2017年8月発表

 

大学生が「働きたい組織の特徴」

■経営スタイルについて 〜8割以上の学生は安定的な組織を支持〜

 

質問項目

支持率%

選択肢A

安定し、確実な事業成長を目指している

82.7

選択肢B

リスクをとり、チャレンジングな事業成長を目指している

17.3

(この調査では選択肢A、Bという対立意見について、「A」「どちらかというとA」の回答をAの支持率にカウントし、「B」「どちらかというとB」の回答をBの支持率にカウントしています。)

 

大学生が、働きたい組織の経営スタイルとして支持しているのは「安定し確実な事業成長」で、8割以上となっています。一方「リスクをとりチャレンジ」の支持はたった17.3%、会社選びも安定志向が伺えます。

  いま日本は少子高齢化で国内市場が縮小しています。よって多くの日本企業は世界市場にチャレンジしようとしており、学生と企業の価値観は相反していると言えるでしょう。

 最近のブラック企業、過労自殺問題などから「リスクをとりチャレンジ」する経営スタイルに対して、学生はブラックな印象を持っているのかもしれません。そういう意味ではブラック企業問題が解決に向かえば、Bの支持が増えるのかもしれません。

 

■ワークスタイルについて(1) 〜8割以上の学生は長時間残業を嫌う〜

 

質問項目

支持率%

選択肢A

仕事と私生活のバランスを自分でコントロールできる

86.4

選択肢B

仕事と私生活は区別なく、一体として働ける

13.6

 

大学生の支持率が最も高かったのがこのAの項目です。最近の過労死、過労自殺問題の影響が大きく、ワークライフバランスに強い関心を示す学生が増えていることは私も感じています。長時間残業を避けたい学生は約85%もいるのです。

メンバーシップの維持、つまり終身雇用を守るため、残業はある程度は必要悪です。そういう点でも日本的雇用システムと学生の価値観は相反していると言えるでしょう。

 

■成長スタイルについて(1)〜ストレスあり成長を支持する学生は3割のみ〜

 

質問項目

支持率%

選択肢A

短期で成長できるが、体力的・精神的なストレスもかかる

31.0

選択肢B

短期では成長しにくいが、体力的・精神的なストレスがない

69.0

 

 これも過労自殺問題などの影響と思われます。体力的・精神的なストレスがかからないことを支持する率は約7割となっています。

 とはいえ要求水準が高い環境の方が人を成長させることもあります。そして成長しスキルの高い人の方が、長い人生において自由、安定、収入の面で有利になることも社会人の常識です。

 このことを学生が理解しているかが心配です。この点では学生と企業の価値観は相反していると言えるでしょう。

 

■成長スタイルについて(2) 〜ポータブルスキルの支持率は7割〜

 

質問項目

支持率%

選択肢A

どこの会社に行ってもある程度通用する汎用的な能力が身につく

70.4

選択肢B

その会社に属していてこそ役立つ、企業独自の特殊能力が身につく

29.6

 

 いわゆるポータブルスキル(企業間を移動しても通用するスキル)支持率が7割で、正しい安定志向の表れと言えるでしょう。

 ただ今までの調査結果から気になる点があります。多くの学生は、安定的な組織で、ワークライフバランスもよく、短期で成長しないストレスフリーな環境を希望しています。しかしそのような環境で汎用的な能力、つまりポータブルスキルが身につくとは思えません。世間をまだ知らないゆえの御都合主義と考えることができます。

 

 次回は、今回の調査のつづきとして、大学生が年功序列と全国転勤についてどう考えているのかを見ていきます。お楽しみに。